坂田さん
ニュージャージー在住
大手製薬会社勤務
戸塚:坂田さんは、2021年にLEADプログラムを受講されました。そして、2024年4月より米国でお仕事をされています。
まずは、ニュージャージーオフィスでの現在の業務内容を教えてください。
坂田さん:私は、現在、日系大手製薬会社の米国拠点にて、グローバルな規模での医療用医薬品の臨床試験に携わっています。
臨床試験では、患者さんの膨大なデータを集め、有効性と安全性を確認します。その際、元となるデータに誤りがあると、解析結果の信頼性に疑問が生じます。私の役割は、患者さんの安全性を確保しながら、高品質なデータを効率的に入手するための試験設計と業務プロセスの改善です。
渡米後は、以前携わっていた国内業務と比較して、関わる人たちの規模が格段に大きくなり、大きなやりがいを感じています。
戸塚:グローバルな環境での業務に、どのようなやりがいを見出されていますか?
坂田さん:米国に来て、日々感じていることは、何より「違いが楽しい」ということです。
日本国内の業務では、総じて、似通った教育やバックグランドを有する人たちと仕事をしていました。ニュージャージーのオフィスには、文化的背景や国籍など様々なバックグラウンドを持つ人たちが集まっており、日々の業務において「違い」に直面します。「違い」が難しさを生み出す部分もありますが、私はむしろ、その「違い」を楽しむように心がけています。
ニュージャージーのオフィスでは、私の従事する分野においては、日本人は私1人です。日系の製薬会社であることから、日本からの駐在員の仲間は大勢いますが、私の所属する職場においては、日本人は私だけという環境です。
同僚たちと協業する場を客観的に観察してみるとすれば、それは、まさに小さな地球と表現できます。アメリカ人、ヨーロッパ出身者、インド系、中国出身者等、世界中から人が集まっています。日本本社とのやりとり以外でいえば、日々のコミュニケーションは、完全に英語環境です。
戸塚:「違い」を楽しめる人と、楽しめない人がいます。坂田さんが「違い」を楽しむために意識している秘訣を教えてください。
坂田さん:私が意識していることは、チームが目指しているゴールは同じということを忘れないことです。一人一人が「会社を良くしたい」、「患者さんに貢献したい」と思って取り組んでいます。たどり着くまでの方法は異なるとしても、最終ゴールは同じということを決して忘れないようにしています。共通のゴールに向かって、どうすればお互いが納得して進めることができるのかを見つけるようにしています。
「なぜ、わかってくれないのだろう?」と嘆き、止まってしまうと苦しくなります。そもそも、異なるバッグランドを持った人たちが、同じゴールを目指しているという状況は、とても特別なことです。その状況に感謝し、皆でゴールに向かっていくことをポジティブに捉え、自分が貢献できることが幸せなことだ、と思い取り組むことが、私なりの「違い」を楽しむ秘訣です。
ベリタスのプログラムでは、様々なビジネスリーダーのインタビューを題材に多面的に英語で議論をしました。多くのグローバルリーダー達が、多国籍組織を率いる鍵として「最初にゴールを設定する」と述べていたことを記憶しています。今、自分がそのような多国籍な環境で働いている中で、まさにゴール設定の大切さを改めて認識しています。つまずいた時は、何のためにやっているのかと共通のゴールを常に振り返るように心がけています。
戸塚:坂田さんが、今苦労している点を教えてください。
坂田さん:私が今苦労している点は、主に3つです。
まずは、知識面です。臨床試験の業務プロセスの設計では、データの取り扱いは、データサイエンティストの同僚たちと協業しながら取り組みます。私は、生物学の修士を取得していますが、自分の専門分野以外のことも理解して、他のチームと対等に話をできないと、会議をファシリテートすることができません。今は、この点に課題を感じ、努力を続けています。
2つ目の点は、「違い」が元となって生じる異なる前提の理解についてです。日本の職場では、あえて明示的に言わなくても事がスムーズに進んでいたような状況でも、こちらではうまくいかないことが多々あります。「なぜ、そのように進めたいのか?」、「なぜ、別のやり方が良いと思うのか?」と疑問に思うことがあります。そのような時は、必ず、チームメート同志で、なぜ (= Why ?) を確認するようにしています。
3つ目の点は、言語の面です。やはり、アメリカのオフィスで、アメリカ人と英語でコミュニケーションをとる時は、ネイティブスピーカーたちは、容赦ないスピードで、難解な表現を使って話をしてきます。まさに、ベリタスのゴールである「相手のペースで聞く。自分のペースで話す」の大切さを改めて認識しています。
戸塚:3つ目のポイントについて、坂田さんが心がけている対処方法を教えてください。
坂田さん:話を理解する上でクリティカルな部分を流してしまうと後々困ります。まず、わからなかったときは、「今の表現の意味を教えてほしい」、「別の表現で言い換えてほしい」と明確に聞き返すようにしています。
自分の意見を述べる時には、ベリタスのクラスで学んだ「自分のポジション (結論メッセージ)を明確にして発言する」ことを常に意識しています。ポジションを明確にするとは、曖昧な返事をせず、それぞれの事柄に対して YESなのか、NOなのか、やるべきなのか、やらない方が良いのか等、自分の意見を明確に言うことです。
当然ですが、今でも言いたいことをストレートに伝えられない、言葉にできないことへのもどかしさを感じます。それでも、日々の業務の中で、自分の中で考えが完璧にまとめられていないテーマや、今まで考えたこともなかった事柄に直面しても、その状況、その時点で、分かる範囲で考えをまとめ、自分のポジションを明確にして発言するように心がけています。そうすることで、互いの認識をすり合わせることができ、チームのディスカッションにも貢献できていると考えています。
戸塚:ベリタスのプログラムで一番役に立った点を教えてください。
坂田さん:繰り返しになりますが、一番役に立ったことは、「自分の意見をはっきりと明確に言い切ることの大切さ」を学んだことです。
次に、自信を持って堂々と自分の意見を述べる訓練にも繰り返し取り組ませてもらいました。アメリカ人を真似て格好の良い英語を話すことをゴールにするのではなく、1) 一つ一つの言葉をはっきり明瞭に発音する、2)伝えるメッセージを簡潔に表現する、という2点を意識してアウトプットの練習したことは、赴任後に特に役立っています。
「自分のポジションを明確にして話す」、「必ず理由づけをする」練習に数多く取り組んだことにより、自分の考えをロジカルに言葉にして発言することに大きな自信を持つことができました。
また、「わざわざ結論を言わなくてもいいだろう」、「理由を述べなくても相手はわかってくれているだろう」と思わずに、自分の考えを明確に言葉にして発信していくことがクローバルコミュニケーションにおいて、極めて大切なことだと改めて認識しています。
会議の中で、他の日本人ビジネスパーソンの方が、自信なさそうに話したり、その場で自分の意見を言うことができない状況を目にすることがあり、私が苦労する部分と同じだと感じます。ベリタスでは、私たち日本人が苦手とする課題の克服のために、徹底的に訓練することができて良かったと考えています。
戸塚:ベリタスがキャリア形成に役立った点があれば、是非教えてください。
坂田さん:ベリタスの受講者さんは皆さんキャリアへのパッションがあって、やりたいことが明確な方が多いので、大変な刺激を受けました。受講当時はまだ前の会社に在籍していた時でしたので、今後のキャリアの方向性について考えを整理していた時期でしたが、海外から帰任された方、これから海外へ行きたいと思っている方など色々なクラスメイトにお会いすることができて、一緒に切磋琢磨しながら勇気や刺激をいただきました。
中でも、海外赴任への決意ができたことが一番大きいと考えています。海外駐在してもやっていけると思えるグローバルビジネスコミュニケーションスキルを得たことが自信につながりました。そして、ベリタスで出会った方々に背中を押してもらえました。
米国に赴任後、大勢の参加する会議の場で、自分がファシリテーションをやってみようという勇気が出たり、実際堂々と意見を述べられるようになったことも、ベリタスのおかげだと感謝しています。
戸塚:それを聞いてとても嬉しいです。プログラム受講後に、意識して取り組まれたことはありますか?
坂田さん:自分の意見を明確に持つことの大切さを学んだことにより、プログラムの受講後は、ポッドキャストなどを、より頻繁に聴くようになりました。ショートトピックのニュースや個人のエッセイを聴いて、様々なアウトプットの仕方や表現方法を勉強しています。こう伝えるとわかりやすい、こういうこともあえて言葉にすれば相手にとって理解しやすい、などと勉強になることが多いです。そして、聴いたあとには自分はどう思うのかを考え、自分の意見はこうだとポジションを明確にするよう心がけています。
当時のクラスメイトの皆さんは私にとって戦友であり、今でも仲間です。ベリタス卒業後も定期的に勉強会をするなどして交流を続けています。
戸塚:今後のキャリアの目標について教えてください。
坂田さん:まずは目の前のことを一生懸命やりながら、周りに良い影響を与えられる人間になりたいと思っています。
私が所属する会社は、日本発のグローバル企業になることを目指しています。日本人のリーダーシップを信じて、日本の良さを活かしていこうと頑張っているので、そういった役割を担えるような人間になりたいと考えています。日本ならではの経験、知識、良さを活かしたグローバル企業づくりをリードしていければ嬉しいです。
短期的には、海外に出る目的の一つとして、異なる文化を学んだり、様々な人たちと触れ合うことだと考えていますので、仕事以外でも、積極的に現地の人たちと関わりを持ち、異なる人の考え方、文化、歴史などを学んでいきたいと考えています。
戸塚:ベリタスのプログラム受講を検討している人へのメッセージがあれば教えてください。
坂田さん:ベリタスのプログラムは、学習量が非常に多く、費用も高額です。そのため、気軽に受講できるものではないとは考えますが、費用以上のリターンが必ずあることは間違いありません。
英語は話せるようになることがゴールではなく、自分が達成したいことを手助けする手段です。その武器を身につけるために、ベリタスのプログラムは最適だと考えます。
私自身は、実は、英語のクラスを受講したという認識はあまりなく、とにかくロジカルにアウトプットするための思考の特訓をしたという記憶が強いです。わかりやすく物事を他人に伝えるためにはどうしたら良いのか、議論をリードするにはどうすべきか等、コミュニケーションの本質を学ぶことができる素晴らしいプログラムです。ベリタスの受講を通じて是非自分の世界を広げていただきたいと思います。